ウィメンズクリニック神野

生殖補助医療(体外受精・顕微授精)で反復不成功の方へ

はじめに
 生殖補助医療(ART)で反復して妊娠できないのには、いろいろな原因が考えられます。(1)年齢が高い(40歳以上)、(2)卵巣の卵子が減っている(卵巣予備力低下)、(3)卵胞発育障害が重症、(4)子宮内膜の着床能力の問題、などです。しかしながら、私は、他院で失敗を繰り返した多くの患者さんを数十年間も救い続けているうちに、実際には、こうした本来の不妊原因に根差した正当な理由よりも、克服可能なバカげた理由から失敗を繰り返している方のほうが圧倒的に多いことを知りました。
(1) 同じ卵巣刺激法を繰り返している。
(2) クロミッド、レトロゾール、または自然周期の採卵しかしてない。
(3) 胚盤胞にならないので移植せず、を繰り返している。
(4) 十分な理由なく体外受精を避け、顕微授精だけをしている。
(5) 凍結胚移植しかしていない。
(6) 休祝日は採卵しない。
(7) 採卵で麻酔なし。退院時は自分で膣ガーゼを抜き、出血なければ診察なし。
(8) キリキリした余裕のない生活が不妊の根本原因の1つであるのに、それは直さず、不妊だけ克服したいという患者さんの姿勢。
以下でこれらにつき詳述します。

(1)同じ卵巣刺激法を繰り返している。
advice1-fig1.jpgクリックで拡大表示  ひとは顔が違うのと同様に、卵巣の機能が悪く、卵子が良く育たない原因も、患者さん各個人で異なります。そのため、卵巣機能を修正するための最適な卵巣刺激法は、各個人で異なります。ですから、同一または類似の卵巣刺激法のみを繰り返すと、それに合う人は妊娠しますが、合わない人は常に不成功を繰り返します。35年ぐらい前、私は、杏林大学で当時最も妊娠率の高かったロング法のみを用いて体外受精をしていました。そのときの体外受精の反復回数と妊娠率の関係を図1の赤線グラフに示します。妊娠率は、一回目は33%と良好ですが、2回目は23%、3回目は6.3%、4回目以降は0%と、ぐんぐん低下しました。ロング法が合っている人は、1回目で妊娠し、居なくなります。運悪く、何らかの他の原因で1回目に妊娠できなくても、こうした方は2回目で妊娠し、居なくなります。こうして、3回目以降の体外受精では、ロング法が合わない人ばかりが残ります。ロング法が合わない人に、合わないロング法をしても、卵は良くならず、結果、妊娠しないことが続くのです。このことを知ってから約35年間、私はさまざまな方法を開発したり取り入れたりし、今や、多くの方法を患者さん各個人に合わせて使い分けています。失敗したときは、患者さんの好みを見つけるため、卵巣刺激法を変えていきます。こうすると、妊娠率は5回目まで十分高く保たれます(図1黄色グラフ)。

(2)クロミッド、レトロゾール、または自然周期の採卵しかしていない。
 各種卵巣刺激法の妊娠率の比較は、患者さんの相性、使用の状況、解析方法で大きく影響されるため、簡単ではありません。しかし長年真摯にARTを行ってきたため、大体の目安はわかります。私の個人的経験から言うと、もし、全く初めての普通の患者さんが無作為に各種卵巣刺激法に割り当てられ、新鮮胚移植だけを受けたとしたならば、その妊娠率は、bromocriptine-rebound法が35%、ロング法30%、アンタゴニスト法25%、クロミッドまたはレトロゾール法5~7%、自然周期3%と言ったところでしょう。もちろんbromocriptine-rebound法、ロング法、アンタゴニスト法などで妊娠できず、クロミッドで成功する方もいますので、クロミッドが全員に有効性が低いと言っているのではありません。ただ合う人の頻度が低いのです。したがって合う人の頻度が多い順に(つまり上記の妊娠率の高いほうから)採用していくのが理にかなっています。
 さらに、クロミッド、レトロゾール、自然周期は、ARTを開始する前の一般不妊治療で、頻繁に用いられます。医学的には原則、ARTは一般治療で妊娠できない方にする治療法です。したがって普通、ARTをすることになった患者さんは、すでにクロミッド、レトロゾール、自然周期で妊娠できなかった方ですから、これらの方法が有効である可能性は低いでしょう。ARTの適応など考えずに、なんでもかんでも(下手をすれば不妊と言えない人にまで)ARTをするところであれば、クロミッド等の有効性が良いのかもしれませんが。また、高齢者にクロミッドやレトロゾールなどの低刺激法が合うという報告もありますが、実際長年使用した経験では、高齢でも卵巣予備力低下でも高刺激法でよく妊娠しました。
 クロミッドやレトロゾールが合う人もいますので、使うのが間違いとは言いません。妊娠率の高い方法から使い始めるべきだと言っているのです。しかし、クロミッド、レトロゾール、または自然周期のみを反復しているのは、絶対間違いです。より妊娠率の高い、上記の方法を試すべきです。
 自然周期の適応は、女性の卵巣機能が完全に正常で、採卵周期の精神的ストレスでも正常な機能を保てる方のみです。純粋な卵管障害、男性不妊のみなどが候補と言えますが、卵管障害の元の原因である炎症や内膜症は、おうおうにして、卵巣機能障害も併発し、男性不妊と併発の多い性交頻度の低下やセックスレスも、卵巣機能を低下します。さらに、現代社会の高ストレス環境、挙児希望女性の高齢化を加味すると、自然周期が適応できる患者さんはほとんどいないと考えられます。実際、私の患者さんは、ほぼ全員、卵巣機能障害を持っております。卵巣機能障害があり、良い卵子ができないために不妊である方から、そのまま自然周期で採卵すれば、質の悪い卵子が取れるだけです。自然という言葉にごまかされないほうが良いと思います。さらに、本当の自然周期の利点は、脳からのLHサージにシンクロして採卵日時を決定することで、最良の卵成熟を得ることです。しかしそのためには、昼夜を通して数時間ごとに血液または尿でLHを測定し、LHサージ開始をキャッチし、24時間態勢でたとえ夜中の採卵であっても行わなければなりません。私は43年前、こうした採卵を1年以上しましたが、大変な労力です。しかし現在日本で行われている自然周期ARTは、卵胞径やホルモン値で一日単位の採卵日を人為的に決定しており、夜中の採卵などしません。つまりLHサージを時間単位で正確に観察などせず、脳からの卵成熟開始のシグナルにシンクロはしていません。一部自然周期とでもいうのが正当ではないでしょうか。

(3)胚盤胞にならず、移植せず、を繰り返している。
 胚盤胞移植の利点は、着床期の子宮に着床期の胚が移植されること、5日間の胚発育を成しえた良い胚のみが選別されることで、その結果、一般に初期胚移植より妊娠率が高くなります。しかしこれは、良い強い卵が得られる人にのみ言えることで、高齢、卵巣予備力低下(AMH低値、FSH上昇、胞状卵胞数低下、小さい卵巣など)、卵胞発育不良などで、良い卵が得られないときにはそうはなりません。培養液は、いくら発達したといえど、正常な卵管の胚発育サポート能力に比べれば、はるかに劣っています。そのため弱い卵は、5日間のより長い体外培養のストレスで、発育停止し移植できなかったり、見かけ上発育し移植できても、胚質低下で妊娠にいたりません。
 1978年に体外受精が始まってから約20年間は、世界中で初期胚移植(採卵後2~3日後の4~8細胞期胚の移植)のみが行われましたが、それでも妊娠率は30%で、多くの子供が生まれました。当時も胚盤胞移植は試みられましたが、培養液が今より進歩していなかったため、かえって妊娠率は培養時間の短い2日目移植に劣り、そのため2日目移植が主流でした。重要な点は、移植胚と子宮内膜のシンクロがなくても(つまり2日目胚を着床期ではない2日目子宮にいれること)でも多くの人類は妊娠・出産できるということです。したがって良い卵の得られない方は、何も無理をして胚盤胞にすることばかりを追求せずに、より短時間の培養で胚へのストレスを避けて初期胚移植を試みれば、簡単に妊娠に成功することがあるのです。
 正常自然周期では、胚は卵管に4~5日間留まって胚発育をし、その後数時間のうちに子宮に入っていきます。卵管にいる4~5日の間、胚は何らかのメッセージ物質を子宮に送っており、子宮内膜に着床の準備をさせています。ところが胚盤胞移植では、胚は体外の培養液で5日間過ごすため、子宮内膜はこの胚のメッセージを全く受け取りません。そのため、たとえとても良い胚盤胞が移植されても、子宮内膜の着床の用意ができてなくて着床に失敗してしまう人が、約10%ぐらい存在します(約90%の人は、胚のメッセージがなくても内膜が着床可能となるようです)。他方、初期胚移植では、2日目に子宮に入れられた胚が、それから3日間子宮に漂っている間、メッセージを子宮内膜に与えるため、メッセージ欠落による着床障害は起きにくいのです。したがって良い胚盤胞を何回も移植して失敗している人の一部のひとは、初期胚移植で簡単に妊娠することがあります。またこうしたメッセージ欠落による反復着床不成功に対しては、初期胚と胚盤胞を連続的に移植する2段階移植や、子宮空内に本人のリンパ球(採血し1時間で精製できる)またはG-CSFを注入した後に胚移植することも有効です。
 さらに、過去の膨大な臨床研究で示されているように、様々な胚評価法で不良と判断された胚からも正常児が生まれています。不良なほど出生に至る頻度が下がりますが、一般に0%にはなりません。したがって胚の形態が良くないから移植しないというのは疑問です。移植しなければ、妊娠の可能性は0ですから。「射ない矢は当たらない」だと思います
 「胚盤胞にならないと移植しない」をただ繰り返しているのは愚かです。初期胚移植、2段階移植、先行リンパ球/G-CSF注入、など直接的な対策から、最適卵巣刺激法の追求や生活習慣の適正化などでより良い卵とする抜本的な対策までを、推し進めるべきです。さらに全く移植しなければ、避妊と同じで、その間も、加齢と精神的ダメージで卵巣機能障害が悪化していくことを知りましょう。

(4)十分な理由なく体外受精を避け、顕微授精だけをしている。
 顕微授精が必要な方は、(a)体外受精で受精できない重症男性不妊、(b)受精を妨げる免疫性不妊、(c)精子の活性酸素などの産生が高い男性不妊(体外受精で受精はするが、媒精中に精子由来の活性酸素などで卵子が傷つき胚質が低下する)、などです。(a)は、精液検査で診断し、あいまいな時は、卵を体外受精と顕微授精の2群に振り分けて(スプリット法)試みます。(b)は、たいへんまれで、抗精子抗体検査などの検査はありますがあまりあてにならず、疑うときはスプリットします。本当に免疫性不妊であるときは、体外受精より顕微授精が圧倒的にいい結果なります。(c)は、実用的な診断法はありません。体外受精で受精するもいつも胚質が不良なときに疑い、スプリットで顕微授精群がより良いときに推定します。こうした方々には顕微授精はたいへん有効で、用いるべき技術です。
 しかし顕微授精には重大な欠点があります。卵にガラス針を刺すのですから、当然、卵が傷つき、弱ることです。強い良い卵子は、問題なくストレスを乗り越え、良い胚に発育し、元気な子供になります。しかし高齢、卵巣予備力低下、重症卵巣機能障害などの方からは、しばしばあまり強くない卵が採卵されます。こうした弱い卵では、顕微授精でさらにストレスを受けると、たとえ胚発育はできたとしても子供にはなれなくなることがあります。鶏卵を割るとき、古い卵は殻に当たるとすぐこわれてしますのに、生みたて卵はこわれないのと同じです。こうした弱い卵も、体外受精で静かに受精すると、子供になれる子達がいるのです。
 したがって、顕微授精は全員にすべきものではありません。体外受精で十分な方は、体外受精の方が胚へのストレスが少なくなり、妊娠がより期待できます。意味もなく顕微授精のみをしているのは間違っています。顕微授精代を儲けたくてそうしているのかと、疑ってしまいます。患者さんにも時に問題があるのかもしれません。夫は忙しくて採卵の時来れないので、凍結精子でしてもらってませんか?凍結精子では時には受精能が落ちることがあり、本来は回避できる顕微授精が必要になることがあるのです。子供さんが誕生するビッグバンの日には、夫も満を持して来院すべきではないですか?

(5)凍結胚移植しかしていない。
 子宮の着床能力は、一般に、卵巣刺激周期よりも正常の排卵周期でより勝ることが多いです。そのため若くて良い卵を多く持つ方では、新鮮胚移植よりも凍結胚移植にした方が、しばしばよく妊娠します。しかしながら凍結胚移植をするためには、胚は-196℃のvitrification(ガラス化状態)にして保存されるため、大変な試練を受けます。どんなに技術的に進歩したといえども、ストレスがないわけではありません。そのため、強い良い胚は、問題なくこれを乗り越え、自然周期の着床能のより高い子宮の恩恵を受けることができますが、高齢、卵巣予備力低下、重症卵巣機能障害などで卵、それに由来する胚が弱いときには、凍結・解凍のストレスで子供になる能力を失い、自然周期の着床能の優越性は意味がなくなります。
 卵巣刺激周期で子宮着床能が低下する人がいるとは述べましたが、平気でどんどん妊娠できる人も多くいます。1978年に体外受精が始まってから15年間ぐらいは、新鮮胚移植が原則で、残った胚を凍結するのが普通でした。その頃も新鮮胚移植で妊娠率30%ぐらいで、多くの人が世界中で子供を産んでいます。今も新鮮胚移植で出産する人は少なくありません。したがって卵の良くない方は、凍結胚移植に固執することなく、新鮮胚移植も考慮すべきです。卵が良い方でも、凍結胚移植しかしておらずかつ反復不成功なら、新鮮胚移植は試みるべきと考えます。
「凍結胚移植しかしない」という方針は、狭量で浅薄です。

(6)休祝日は採卵しない。
 当然、最も卵が成熟したときに採卵をしなければ、最高の妊娠率は得られません。妊娠能力の高い方は1日前後にずれても妊娠しますが、多くの方は、最適日から1日ずれたらもう妊娠しません。そのため、最高の妊娠率を追求し邁進してきた私は、43年間、土日休日関係なしに、毎日採卵することになりました。休祝日は採卵しないとか、固定日採卵をしているとか、患者さん側の都合でこの日は忙しいからずらしてほしいとかでは、難しい不妊の方は救われないでしょう。医療従事者、患者さんともに、熱意の問題です。
 私は長年、たいへん多くの患者さんの自然排卵日を観察してきましたが、奇妙なことに土曜と日曜の排卵がとても多いです。つまりゆっくりできるときに排卵するように、体が順応しているのでしょう。ARTで卵巣刺激をしても、やはり土日に最適採卵日が来ることは珍しくありません。何らかの未知のメカニズムが動いているのでしょう。自然の摂理には耳を傾けないと、結果は推して知るべしです。

(7)採卵で麻酔なし。退院時は自分で膣ガーゼを抜き、出血なければ診察なし。
 他院から来た患者さんから、「細い針だから痛くないといわれ、麻酔なしに採卵を受けたが、すごく痛かった」と何度も聞きました。ネットでも採卵は痛いとの投稿が多くありますが、それは麻酔をしないからです。私は43年間一回たりとも麻酔なしの採卵などしたことはありません。膣壁と腹膜はとても痛いところだからです。1990年前半に初めて麻酔なしの採卵をしている施設があることを知った時は、「この20世紀でなんで麻酔をしないのだろう」と不思議に思いました。よくよく聞くと、そうした施設ではクロミッドや自然周期でのARTが多く、「今時なぜ妊娠率の悪いそんな方法をしているのだろう」とも思いました。
 と言いますのは、1978年、イギリスでの世界最初の体外受精成功は自然周期で、その後約1~2年は世界中が自然周期をしましたが、妊娠率は約1%ほどでした。1980年にオーストラリアでクロミッドを使い妊娠率が約3%となり、1981年にはUSAでゴナドトロピン(hMG法)を用い当時としては驚異的な20%が達成され、以後はhMG法が主流となりました。その後80年代半ばよりpremature LH surgeを防ぐためにGnRH agonistのロング法、ショート法が登場し、妊娠率は30%と、ついに正常人類の自然妊娠率と同じになりました。さらに90年代半ばよりアンタゴニスト法が現れ、簡便化、経済的軽減化が進みました。私が麻酔なしの採卵を初めて耳にしたのは、こうしたときでした。
 多くの話を患者さんから聞くうちに、なぜそんなことをしているのか想像がつきました。麻酔なしで採卵をしている多くの施設は、一日に60人とか途方もなく多くの採卵をしています。成功率の良いロング法、アンタゴニスト法ですると、一側の卵巣の穿刺吸引(採卵)に15分はかかり、麻酔なしでは痛みと体動のため危険でできません。しかし麻酔をしたら回復(安全に目覚める)に最低1時間はベットに寝かせ、かつ看護ケアする必要があります。そのためには多くのベットと看護師が必要となり、お金がかかります。そこでクロミッドを使えば卵胞は2~5個しか育ちませんので、採卵時間は数分で済み、細い安価な単純針を用いれば、麻酔なしでも何とか我慢させて採卵できるのです。この単純針は高価な2重ルーメン針に比べ細くできますが、洗浄しにくいため、多くが一回吸引のみで採卵しているようです。そのため洗浄を繰り返せる2重ルーメン針(当院はこれです)に比べ、卵回収率が圧倒的に劣り、結果、そうした施設では、卵回収率が悪く、それをempty follicle 症候群と称して、病態のようにごまかして学会発表しているのを聞いたことがあります。つまりたくさんの採卵を低コストでこなし、お金儲けが目的なのです。あきれてものも言えません。
 さらに退院時は膣内に留置したガーゼを患者自身で抜去し、出血がなかったら帰ってよいとされるそうです。ガーゼでわかる出血は外出血のみで、より危険な卵巣や腹壁から腹腔内に出血する内出血は、超音波や内診をしなければ見逃します。これもたくさんの患者さんをこなすための手抜きとしか言えません。私は、一度たりとも、超音波、内診による退院診察なしで患者さんを帰したことなどありません。

(8)キリキリした余裕のない生活が不妊の根本原因の1つであるのに、それは直さず、不妊だけ克服したいという患者さんの姿勢。
 多くの患者さんが、疲れるほど頑張っている仕事や社会活動はそのまま続けながら、さらにプラスして不妊治療をしようとします。頑張りすぎている仕事や社会活動そのものが、不良な生活習慣やストレスから、不妊を起こしていることを忘れています。不妊を克服するどころか、ストレスの増加で益々不妊を悪化し、不妊治療失敗を招くのです。
 「妊娠は、ゆとりある、健康な、そして幸せなところに訪れる」、これが自然の摂理です。自然の生き物である我々は、自然には勝てません。過剰なときは何かを減らすかあきらめなければ、全てが失敗します。仕事は休んでまた再開もできますが、子作りには年齢による限界があり、たぶん大事な時期を逃せば夢はかなわなくなるでしょう。
 「採卵の日に夫は忙しくて来れません。」技術的には、精液を取って持ってくる、精液を事前に凍結保存しておく、など対策法はあります。でも新鮮に射精された精液に比べれば、当然、精子の質は悪くなります。そのため本来は不要な顕微授精が必要となることもあり、弱い卵は子供になれないこともあります。ご主人は本当にその日を都合できないのでしょうか。もし交通事故にあったら、もしコロナにかかったら、代わりの誰かがどうにかして会社は動いていくのではないですか?あなたのまだ見ぬお子さんにとっては、かけがえのない誕生できるかどうかの瞬間なのですよ。百歩譲って、もし妊娠したとして、将来お子さんがあなたに聞いたら、あなたは誇りをもって「仕事で忙しかったから、凍結精子で作ってもらったんだよ」というのですか?

2026年9月13日

ウィメンズクリニック神野 院長 神野 正雄