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第40回日本受精着床学会総会・学術講演会にて世界体外受精会議記念賞(基礎)を受賞しました。

 この研究の成果は、2022年7月28日に第40回 日本受精着床学会・学術講演会で発表いたしました。以下に受精着床学会発表の抄録を記載いたします。

 また、受賞についての記事が第849号 慶應義塾医学部新聞に掲載されました。掲載内容は下の記事抜粋からご覧いただけます。
→ 記事抜粋 ←

顕微授精のために開発した細胞内液様培養液(ICS)は、より安全であるだけでなく、胚発育能を促進する。

目的:顕微授精では細胞外液様培養液(ECS)が卵子に注入される。しかし細胞外液と内液は組成が異なり、当然、細胞内液様培養液(intracellular solution: ICS)を注入すべきである。そこでICS (特許取得)を開発し、安全性をマウスで検討したところ、安全性のみか、想定外の胚発育能促進効果を見出した。

方法:ECSより、K, Mg, リン酸, 硫酸ionが多く、Na, Clが少ない7種ICSを考案し、うちICS-2, -5, -6, -7の4つを検討した。ICS-5はICS-2よりリン酸, 硫酸ionが多く、ICS-6はさらにKもより多い。ICS-7はICS-2の2倍希釈。ECSはWhitten液 (W), PBS, mHTF, G-MOPSを検討した。動物実験倫理を順守し、マウス前核期胚を、コントロール群(穿刺せず培養)、穿刺のみ群(穿刺するも培養液注入なし)、注入群(培養液を注入)に、無作為に割り当てた(各群n = 85)。1卵子(113~268 pL)に定量37 pL (ヒト顕微授精で確実に有害な量)を注入した。5日培養し、胞胚発育を比較した。また前核期胚をレシピエント卵管に移植し、生産率, 産仔の発育・妊孕性を比較した。

結果:コントロールの拡張胞胚率86%, 孵化率52%は、穿刺のみで73% (P<0.05), 41%に低下したが、ICS-2を注入すると両率とも86%, 60%へ有意に増加し、特に孵化率はコントロールを凌駕した。しかしICS-5, ICS-6, W, PBSを注入すると、拡張胞胚率は66, 67, 67, 65%へと穿刺のみよりさらに悪化し、孵化率は穿刺のみと同等で、結局、両率ともICS-2より有意に低かった。ICS-7では拡張胞胚率75%, 孵化率45%と穿刺のみと同等であった。移植胚あたりの生産率は、コントロール18%, 穿刺のみ16%, ICS-2 37%, mHTF 11%, G-MOPS 3.1% と、ICS-2が他の全てより有意に高かった。産仔の体重増加、生存率、妊孕性は、ICS-2とコントロールで同じであった。

結論:ICS-2は、ECSより卵子注入により安全であるのみか、胚発育能促進効果を有し、前核期胚に注入すると、妊娠・出産率が無操作胚以上に増加した。また産仔も正常であった。本法は、ヒト生殖補助医療で切望される高齢者妊娠率改善の新しい治療法として期待される。

第74回 日本産科婦人科学会 学術講演会で発表を行いました。

 この臨床研究の成果は2021年に Reproductive Biology and Endocrinology にも掲載されています。

Trapa bispinosa Roxb. extract lowers advanced glycation end-products and increases live births in older patients with assisted reproductive technology: a randomized controlled trial

 以下に日本産科婦人科学会発表の抄録を記載いたします。

抗糖化食品ヒシエキスは終末糖化産物を低下し、高齢者ART生産率を著しく増加する : 前方視的無作為試験。

目的:終末糖化産物 (AGE) は、加齢、糖尿病、不妊を含むインスリン抵抗性関連疾患の主病因である。ヒシ科植物エキスはAGE 形成抑制と分解をする。倫理委員会承認、説明と同意のうえ、前方視的無作為試験 (UMIN000017758) で、ヒシエキス投与によりAGEを低下し、高齢者ART成績を改善することを試みた。

方法:38-42歳、1-3回目ARTの64例を、前方視的無作為にヒシエキス (プレグナサポート, 林兼産業) 投与/非投与群 (対照群) に振り分けた。第1周期は一般不妊治療をし、第2周期はカウフマンとGnRHa開始とし、第3周期にlong法でARTを施行した。非妊娠例には凍結胞胚移植を続けた。投与前・後の血清AGE、OGTT等の変化と、卵胞液AGEを両群で比較した。

成績:ヒシエキス群32例と対照群31例 (1例drop out) の累積生産率は、47% vs. 16% (p<0.01; RR, 4.6; 95%CI, 1.4-15.0) 、ETあたり生産率は、28% /47 ET vs. 10% /49 ET (p<0.05; RR, 3.4; 95%CI, 1.1-10.4) と、ともにヒシ群で有意に高かった。年齢, day 3 FSH, AMH, ヒシエキス有無のうち、ヒシエキスのみが累積生産率と相関した (p<0.05; OR,5.1; 95%CI, 1.4-18.3, logistic)。ヒシエキス投与は、卵・胚発育能と自然周期での内膜着床能を有意に増加し、血清と卵胞液AGEを有意に低下した。AGEと受精, 胚発育, 着床の指標には有意な相関を認めた。

結論:ヒシエキスは、血清と卵胞液AGEを低下し、卵・胚発育能と内膜着床能を増加し、よって高齢者ART生産率を著しく増加した。AGE低下による新しい不妊治療法が示された。ヒシエキスは、糖尿病, 高血圧などのインスリン抵抗性関連疾患の治療にも応用が期待される。