日本産科婦人科学会の2019年度統計で、過去35年ほどの高度生殖医療(ART)累積出産数が70万人との報告が出ました。現在、日本での新生児の約14人に1人はARTで生まれた子供であると言われています。以前と比べるとARTは普及してきましたが、それでも子供に恵まれずに悩まれているご夫婦は大勢いらっしゃいます。
当院で治療されている女性の年齢は27歳から49歳,平均40歳です。年齢が高くなるほど、妊娠率は低下しますが、平均40歳にもかかわらず、当院の2020年度実績は、新鮮胚移植で採卵あたりの妊娠率が32%、凍結胚移植で移植あたりの妊娠率が30%でした。
「ひとりでも多くの方に妊娠してほしい」とスタッフ一同、こころを込めて治療にあたっています。
ARTによる日本全体の治療成績 (2019年日本産科婦人科学会統計)
実施施設数 2018年:594 2019年:595 |
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体外受精 |
顕微授精(TESEを含む) |
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2018年 |
2019年 |
2018年 |
2019年 |
採卵あたりの妊娠率 |
5.4% |
4.8% |
3.6% |
3.1% |
妊娠あたりの流産率 |
25.0% |
23.1% |
27.5% |
26.8% |
生産分娩数 |
3,246 |
2,821 |
3,105 |
2,641 |
採卵あたりの生産率 |
3.8% |
3.5% |
2.4% |
2.1% |
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凍結胚移植 |
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2018年 |
2019年 |
移植総回数 |
199,022回 |
210,656回 |
移植あたり妊娠率 |
34.7% |
35.4% |
妊娠あたり流産率 |
25.5% |
25.4% |
生産分娩数 |
47,873 |
52,513 |
移植あたりの生産率 |
24.1% |
24.9% |
ARTを受けられた方の年齢別の成績 (2009年 ハーバード大学発表)
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3回までの妊娠率 |
6回までの妊娠率 |
40歳以上 |
20% |
30% |
35歳以下 |
60% |
75% |
35歳以下では治療した方の3/4が妊娠できますが、40歳以上では1/3しか妊娠に至ることができません。
年齢による卵巣機能の低下は著しく、一刻も早い治療が望まれます。
何が原因なのでしょう?
妊娠できない原因は大きく3つに分かれます。
(1) 卵巣の機能が悪いため、赤ちゃんになれる卵が育たない。
(2) 卵管がつまっているため、卵子と精子が出会えない。
(3) 精子に問題があり、うまく受精出来ない。
女性側と男性側のそれぞれの原因によるものは30~40%とほぼ同等ですが、両方に原因がある場合も15~30%です。どちらとも特定できない場合も5~10%あります。
近年、男性側に原因があった場合、顕微授精という高度生殖医療で多くの方が妊娠できるようになりました。しかし、女性の卵巣機能低下が原因の場合には、外来治療はあまり有効でなく、ARTですら時に困難を極めることがあります。
まずは不妊の原因を調べて、適切な治療を行っていくこと。そのためには、お二人が力を合わせていく以外にありません。
そして、ご夫婦が心身共に健康であること、健やかで楽しく生活することは、よい卵と精子をつくるためには重要なことです。
毎日笑顔で健康的な日常生活を送っていると、身体も自然と応えてくれるはずです。
当院ではそのような方が大勢妊娠しておられます。